2013年3月15、16、17日に敢行された、THA BLUE HERBによる東日本大震災で被災した東北の東海岸側を国道45号線に沿って南下する"CAN'T STOP TALKING TOUR"。目指したのは東北ライブハウス大作戦 によって建てられた、宮古、大船渡、石巻にある3つのライブハウス。
時は2年後の週末。
しかし、ただの週末と呼ぶにはあまりにも濃密な時間がそこにはあった。
晴れ渡った午後、大切なものの多くが奪われた地をひた走り、辿り着いた突風吹きすさぶ暗黒の夜。共有された言葉、そして言葉にならないその先の祈り。
THA BLUE HERBの4枚目のアルバム「TOTAL」に込められた想い、そして言葉と音、収められている音楽の大部分は、あの日、2011年3月11日に起こった出来事と、それ以降の日々から生まれたと言っても過言ではない。上向きな視点を、希望のヴィジョンを、それでも立ち上がろうとする意思を、どうヒップホップで表現していくのか。
これはTHA BLUE HERBの活動第4期(PHASE 4)を始める動機の最初であり、志向する最後でもある。そういう想いの元、あの日から1年後の2012年3月にアルバム「TOTAL」は完成した。
そして段階はライブへと移る。昨年6月から始まったツアーは列島各所を舞台に繰り広げられ、発売された「TOTAL」の言葉や音は、1年間、現場で打たれ、鍛えられ、磨かれていった。そして冬を経て、遂にその季節は、約束の夜はやってきたのだ。「TOTAL」に宿命付けられた、絶対に避けては通れない使命を果たす時がきたのだ。
その使命とは、すなわちあの日、2011年3月11日に起こった出来事と、以降の日々から生まれた音楽を、それが実際に起こった地で鳴らす事。その地で、あの日以前、あの日、あの日以降、生きてきた人達の前で鳴らす事。あの日から2年。こちらにも十分に言葉は選んできたという想いはある。
ただ、正直、その言葉達を投げかける事への恐怖もまたあった。乗り越えなくてはならないのは、被災地に生きる人達だけではない。そこに向かう我々も乗り越えなくてはならないものがあるのだ。遅かれ早かれ、体をそこに運んだとしても、傷つけたくない、傷つきたくないでは、乗り越え、心に近づく事は、一体になる事はできないのだ。
そして傷は人の数だけある。
さあ、オマエは何を話すのだ?
【THA BLUE HERB(ザ・ブルーハーブ)】
●THA BLUE HERB(ザ・ブルーハーブ)●
ラッパーILL-BOSSTINO、トラックメイカーO.N.O、ライヴDJ DJ DYEの3人からなる一個小隊。1997年札幌で結成。以後も札幌を拠点に自ら運営するレーベルからリリースを重ねてきた。'98年に1st ALBUM「STILLING,STILL DREAMING」、2002年に2nd ALBUM「SELL OUR SOUL」を、'07年に3rd ALBUM「LIFE STORY」を発表。
'04年には映画「HEAT」のサウンドトラックを手がけた他、シングル曲、メンバーそれぞれの客演及びソロ作品も多数。映像作品としては、ホーム北海道以外での最初のライブ「演武」、結成以来8年間の道のりを凝縮した「THAT'S THE WAY HOPE GOES」、'08年秋に敢行されたツアーの模様を収録した「STRAIGHT DAYS」、そして活動第3期('07年〜'10年)におけるライヴの最終完成型を求める最後の日々を収めた作品「PHASE 3.9」を発表している。
HIP HOPの精神性を堅持しながらも楽曲においては多種多様な音楽の要素を取り入れ、同時にあらゆるジャンルのアーティストと交流を持つ。これまで列島250箇所以上に渡って繰り広げられたライヴでは、1MC1DJの極限に挑む音と言葉のぶつかり合いから発する情熱が、各地の音楽好きを解放している。そして、2012年4th ALBUM「TOTAL」と共にシーンに帰還。1MC1DJ、傷深き混迷極まる列島ステージ最前線へと再び出立。